キャリア戦略2026-08-13監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

40代・50代からの製造業事務転職、東海で書類選考を通す条件

この記事の要点

「うちの年齢だと、もう書類選考すら通らないんじゃないか」——40代後半や50代の方から、面談の場でこの言葉を聞くことは、東海の製造業事務のご相談では珍しくありません。

結論から先にお伝えすると、僕の体感値では「経験の連続性」がある転職であれば、40代・50代でも東海の製造業事務市場で十分に戦えます。逆に、経験の連続性がない「未経験の職種転換」は、20代・30代のそれよりもハードルが上がるというのが実感です。この記事では、なぜ製造業の事務が年齢に対して他業界より寛容なのか、40代と50代でそれぞれどこが壁になるのか、書類選考を通した実例と落ちた実例の違い、そして今日から何を準備すればいいのかを、できるだけ具体的にお話しします。

0. 結論:「経験の連続性」があれば、40代・50代の製造業事務転職は東海でも十分に戦えます

僕がこれまで東海エリアの製造業事務の転職相談を受けてきた中で感じている傾向は、はっきりしています。「今と同じ機能の延長で、別の会社・別の規模に移る」転職は、40代・50代でも書類選考の通過率が大きく落ちません。一方で、「まったく違う職種に、年齢を重ねてから初めて挑戦する」転職は、20代の未経験転職と同じ土俵では戦えないというのが実感です。この違いを理解しているかどうかで、同じ50歳の方でも転職活動の結果が大きく変わってきます。40代と50代でも、実は壁の質が違うということも、後ほど詳しくお話しします。

1. なぜ製造業の事務は、年齢に対して他業界より寛容なのか

1-1. 「ものづくり白書」が示す、製造業就業者の高齢化

経済産業省・厚生労働省・文部科学省が毎年まとめている「ものづくり白書」(2024年版)では、製造業の就業者構成が他産業に比べて高齢化していることが指摘されています。製造業の現場そのものが高齢化しているという背景があるからこそ、事務・管理部門の採用担当者も「40代・50代の応募者」を特別扱いしない土壌があると、僕は感じています。IT業界やスタートアップのように「若い組織であること」自体が評価軸になる業界と比べると、製造業は年齢構成のリアリティがそもそも違うのです。

1-2. 求人票の「年齢不問化」という制度的背景

もう一つの背景は制度です。労働施策総合推進法(旧・雇用対策法)第10条により、2007年から求人票への年齢制限の明記は原則として禁止されています。もちろん、実際の選考で年齢が一切影響しないとまでは言い切れませんが、少なくとも「50歳以上不可」といった明示的な線引きは、東海の製造業事務求人でもほとんど見かけません。年齢を理由に応募を諦める前に、求人票そのものには年齢の壁が明記されていないという事実は、知っておいていただきたいところです。

1-3. 東海特有の事情:地場の中堅・中小企業の存在

東海は、名古屋圏を中心に地場の中堅・中小の製造業が数多く存在するエリアです。こうした企業の中には、経理・総務・購買といった管理部門を長年一人二人で回してきた結果、担当者の高齢化と後継者不在が同時に進んでいるところが少なくありません。この場合、企業が求めているのは「若さ」ではなく「すぐに引き継ぎができる経験」です。同世代・近い世代の実務経験者であることが、むしろプラスに働く場面を、僕は何度も見てきました。実際、後任探しに数年苦労していた企業が、同年代の応募者が来た瞬間に選考スピードを一気に上げるという場面も経験しています。

2. 40代の壁と50代の壁は、実は別物です

2-1. 40代の壁:マネジメント経験の有無

40代の転職相談で最も多く聞かれるのは、「マネジメント経験がないと厳しいのでしょうか」という質問です。僕の体感値では、40代前半までは実務専門職としての転職余地が十分にあります。ただ、40代後半に近づくにつれて、企業側が「係長・主任クラスとして、チームを見てもらえるか」という視点を持ち始めるのは事実です。生産管理事務や調達購買であれば、部下のマネジメントよりも「サプライヤーや他部門との調整力」が評価されるケースも多く、マネジメント経験の有無だけで判断されるわけではないという点も、あわせてお伝えしておきたいです。面接で聞かれた際は、部下を持たなくても後輩指導や他部署との折衝をどう主導したかを語れるよう準備しておくと、この壁は思ったより低くなります。

2-2. 50代の壁:「未経験の職種転換」への厳しさ

50代になると、壁の質が変わります。マネジメント経験より、「今からこの職種を一から覚えてもらう教育コストに、会社が投資する価値があるか」という判断が先に立つのです。逆に言えば、総務から人事労務、営業事務から受発注、経理から原価管理といった「隣接機能へのスライド」であれば、50代でも十分に評価対象になります。僕がこれまで見てきた中では、50代で書類選考を突破している方の多くが、この「隣接スライド」の形を取っていました。反対に、現場作業から一気に貿易事務や品質保証事務へ飛び込もうとすると、書類選考の通過率が明らかに下がる印象があります。

3. 書類選考を通す人・落ちる人の分かれ目(実例で見る)

3-1. 通った例:52歳、生産管理事務への転職

僕が担当した方の中に、52歳で総務・購買事務を10年以上経験されてきた方がいました。転職先は東海の中堅部品メーカーの生産管理事務です。職種名だけを見ると「未経験の職種転換」に見えますが、職務経歴書には「購買業務で培った、生産計画とサプライヤー納期のすり合わせ経験」を具体的なエピソードとして記載していました。生産管理事務は購買・調達との接点が多い職種であり、面接でも「サプライヤーとの調整で困ったときの立ち回り方」を具体的に聞かれ、その場で経験を語れたことが評価につながったと聞いています。年齢そのものは一度も話題にならなかったそうです。

3-2. 落ちた例と、書き直して通った例:47歳、品質保証事務への転職

一方で、47歳で製造ラインの現場リーダーを長く務めた方が、最初に応募した際は書類選考で連続して落ちてしまいました。職務経歴書には「ライン管理・品質チェック・部下10名の管理」とだけ書かれていて、品質保証事務が求める「文書化・記録・トレーサビリティ」の経験がまったく見えなかったのです。そこで、実際に行っていた不良品対応記録の作成や、監査対応での書類準備の経験を掘り起こし、「現場で発生した品質事象を、どう文書に残し、次の工程に共有していたか」というエピソードに書き直したところ、次の応募では書類選考を通過しました。年齢は変わっていません。変わったのは、経験の「見せ方」だけです。

3-3. よくある失敗と、その対処

40代・50代の書類選考でよく見る失敗は、職務経歴書に「担当業務の名称」だけが並び、「その業務で何を判断し、どう工夫したか」が書かれていないケースです。経験年数が長いぶん、経歴が単なる「勤務した会社と期間の一覧」になりやすい傾向があります。対処はシンプルで、応募先の職種が重視するキーワード(生産管理なら「納期調整」、品質保証なら「記録・トレーサビリティ」など)を先に洗い出し、自分の経験の中からそのキーワードに合致する場面を1つずつ書き出すことです。採用担当者が知りたいのは在籍年数ではなく、「その経験を、次の職場でどう再現できるか」という接続点だと考えています。

4. 年収はどう変わるのか——比較で見る現実

年収については、「40代・50代の転職=年収が下がる」という一般論だけで語られがちですが、実際には転職の形によって差が大きいというのが僕の体感値です。目安として、以下のような傾向を感じています。

転職の形年収の傾向(体感値)
同じ機能・同じ職種で会社を移る(例:購買→購買)大きく下がらない、むしろ上がるケースもある
隣接機能へのスライド(例:総務→人事労務)横ばい〜やや下がる程度で収まることが多い
未経験の職種への転換(例:現場作業→貿易事務)一時的に下がりやすく、数年かけての回復が前提になる

この傾向は、以前お伝えした「年収は職種名より機能の希少さで決まる」という考え方と重なります。40代・50代であっても、貿易事務や品質保証事務のように専門性の希少さが評価される機能であれば、年齢を理由に年収が大きく削られる場面は限られると感じています。IT業界などで見られる「若さへの一定のプレミアム」が、製造業の事務ではそもそも小さいことも、背景としてあると考えています。

5. 40代・50代が今日からやれる3つの準備

  1. 【所要30分】職務経歴書を「業務名の一覧」から「判断と工夫のエピソード」に書き直す。特に、他部門・取引先との調整で困った場面をどう乗り越えたかを、1つでも具体的に書く。3-3で紹介した「キーワードに合致する場面を洗い出す」作業を、まずここで済ませます。
  2. 【所要1時間】今の経験と応募先の職種の「接点」を、自分の言葉で説明できるようにする。購買と生産管理、総務と人事労務のように、隣接する機能同士の共通点を紙に書き出し、面接で1分で説明できる形に整えておきます。
  3. 【所要30分】「マネジメント経験の有無」を聞かれた場合の答えを、事前に準備しておく。経験がなくても、調整力や後輩指導の場面など、代替できるエピソードを持っておくことで、40代の壁への回答が用意できます。

この3つは、特別な資格やスキルを新たに身につける話ではありません。合計2時間ほどの作業ですが、今までの経験の「語り方」を変えるだけで、書類選考の結果が変わることを、僕は何度も見てきました。

(結論)

皆さんいかがでしたでしょうか。40代・50代の製造業事務転職は、「経験の連続性」を軸にすれば、東海でもまだまだ十分に戦えるフィールドです。年齢そのものより、これまでの経験をどう語り、どう接続するかが問われている——そう捉えていただければと思います。では今日もがんばりましょう。

よくある質問

Q. 40代・50代でも製造業の事務職に転職できますか?

結論として、経験をスライドできる形であれば40代・50代でも転職は可能です。経済産業省ほか「2024年版ものづくり白書」が示す通り製造業は他産業より高齢化が進んでおり、年齢そのものより「これまでの経験をどう活かせるか」が重視されます。特に生産管理・調達・品質保証など業界特有の実務知識が評価される職種では、年齢の壁は相対的に低い傾向があります。

Q. 未経験の職種に転換する場合、年齢は不利になりますか?

結論として、未経験の職種転換は40代でも50代でも慎重な判断が必要です。僕が見てきた範囲では、同じ機能内での異動(総務から人事労務、営業事務から調達事務など)はスライドとして評価されやすい一方、畑違いの職種への未経験転換は書類選考の通過率が下がる傾向を感じています。前職の実務との接続点を職務経歴書で明示することが重要です。

Q. 年収は下がってしまうのでしょうか?

結論として、経験がスライドする転職であれば年収は大きく下がらないケースが多いというのが僕の体感値です。一方で、未経験の職種へ転換する場合や、管理職経験のない40代がマネジメント採用を狙う場合は、一時的に年収が下がる可能性があります。東海の製造業事務では、機能の希少性が職種名より年収を左右する要素として重視される傾向があります。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

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