職種紹介2026-08-31監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

工場の生産管理システム担当というキャリア―ERP事務職という選択(東海版)

この記事の要点

「情報システム部門にいたんですが、工場の生産管理システム担当という求人、製造業の実務経験がなくても応募していいものでしょうか」。先日、名古屋でのオンライン面談で、こう尋ねられました。

結論から言うと、僕は「十分に狙える」と考えています。ただし条件があります。生産管理システムやERPの担当者という仕事は、情報システムの知識だけでも、生産管理の現場知識だけでも務まりません。東海の製造業求人を見ていると、この職種は「事務」でも「技術」でもない、第三の専門職として少しずつ独立した求人枠になりつつあると僕は体感しています。今日はこの仕事の中身と、狙い方をお話ししたいと思います。

0. 結論――ERP・生産管理システム担当は「事務でも技術でもない」第三の専門職

先にこの記事の骨子をお伝えします。生産管理システム担当(社内では「基幹システム担当」「情報システム担当」などと呼ばれることもあります)は、工場の生産計画・在庫・原価といったデータを扱う基幹システム(ERPパッケージや、企業独自の生産管理システム)の運用・保守・改善を担う仕事です。純粋な情報システム職と違うのは、パソコンの前だけでなく、生産管理部門や購買部門、経理部門の担当者と直接すり合わせをしながら「現場が使える仕組み」に落とし込む役割を負う点だと僕は考えています。だからこそ、情報システム出身者にも、生産管理・購買出身者にも、それぞれ違う強みを持ち込む余地がある仕事です。転職市場でこの違いを理解しているかどうかで、応募先の選び方は大きく変わってくると僕は思っています。

実際、東海のある自動車部品メーカーの求人票では、職種名が「生産管理事務(基幹システム運用)」となっており、所属は生産管理課でありながら、評価制度上は情報システム部門の技術系手当が一部適用されるという珍しい設計になっていました。会社によって位置づけがこれほど揺れる職種は、間接部門の中でも珍しいのではないかと僕は感じています。

1. そもそも「生産管理システム担当」とは何をする仕事か

求人票の職種名だけを見ると分かりにくいのですが、実務は大きく3つに分かれると僕は整理しています。ひとつは日々の運用保守で、受発注データの異常値対応や、マスタ(品目コード、単価、リードタイムなどの基礎情報)の更新作業です。ふたつめはシステム改善で、生産管理部門から「この帳票をもっと見やすくしてほしい」といった要望を拾い、ベンダーや社内SEに橋渡しする仕事です。みっつめは、ERPリプレイス(入れ替え)や新システム導入時のプロジェクト参加で、要件定義から現場への説明会運営まで担当することもあります。使われているパッケージはSAP、GLOVIA、オービックなど会社によって様々で、東海の中堅・中小企業では独自の生産管理システムを長年使い続けているケースも珍しくありません。

僕がこれまで目を通してきた東海の求人票の体感でいうと、情報システム専任者を置かず生産管理担当がシステムも兼務している会社は、中小企業で6〜7割程度に上ると感じています。これは正式な統計ではなく、あくまで僕の観測範囲での体感値であることをお断りしておきます。逆に大手やその協力会社クラスになると、情報システム部門の中に「生産管理システムグループ」として独立した枠があることが多い、というのが僕の印象です。

ある中堅部品メーカーで実際にこの職種に就いている方から聞いた1週間の動きを紹介します。月曜は前週分の在庫差異データをチェックしてマスタの誤登録を修正し、火曜から水曜にかけては購買部門から届いた「発注リードタイムの表示がおかしい」という問い合わせに対応してベンダーに不具合報告を出す。木曜は月次の生産計画会議に同席してシステム側からデータを提示し、金曜は溜まった小規模な改修要望を整理してベンダーとの定例会に備える、という流れだったそうです。派手な開発業務ではなく、この地味な積み重ねこそが仕事の本体だと、僕はこの話を聞いて改めて感じました。

2. 東海の求人票に見る具体的な業務――マスタ整備からベンダー折衝まで

実際の求人票の記載を、僕なりに要約すると次のような業務が並びます。

ここで僕が強調したいのは、「プログラミングができること」が必須条件になっている求人は、東海の製造業ではむしろ少数派だという点です。RPAやExcel VBAで簡単な自動化ができれば歓迎材料にはなりますが、コア業務はあくまで「業務とシステムの通訳」であって、開発そのものではありません。この線引きを誤解して応募をためらう方が一定数いるのではないか、というのが僕の見立てです。中堅企業ではベンダー折衝の比重が大きく、中小企業ではマスタ整備や問い合わせ対応の比重が大きい、という傾向も併せて感じています。

3. 向いている人を3つの軸で見る――人間力・職種経験・技術スキル

「向いている人」を語るとき、僕は人間力・職種経験・技術スキルの3つの軸を混ぜないようにしています。混ぜてしまうと、どれか一つが強いだけの方が「自分には無理だ」と誤読してしまうからです。

具体的な中身強みになりやすい経歴
人間力専門用語の違う相手(現場担当者とベンダー)の間に立って翻訳・調整できる粘り強さ社内問い合わせ対応、営業事務、コールセンター経験など
職種経験生産管理・購買・在庫管理など、システムが扱う業務そのものの実務知識生産管理事務、資材調達、受発注事務の経験者
技術スキルExcel関数・VBA、SQLの基礎、ERPパッケージ(SAP、GLOVIA、オービックなど)の操作経験情報システム部門、社内SE、システムベンダーの運用担当

僕の体感値で言うと、東海の求人では「職種経験」を最も重く見る企業が多く、次に「人間力」、技術スキルは入社後に育成する前提の求人が案外多い、という印象です。3つの軸すべてを最初から満たしている方はむしろ稀で、1〜2つの軸を持ち込みつつ、残りは入社後に学ぶという前提で選考が進むケースを僕は何度も見てきました。逆に、技術スキルだけを前面に出して職種経験も人間力も語れない応募書類は、東海の製造業では通過率が低くなりがちだというのが僕の実感です。「このシステムを何のために使うのか」という業務側の視点を一言添えられるかどうかで、書類の印象は大きく変わってきます。

4. 年収相場の目安と、どのルートから来た人が高く評価されるか

年収については、あくまで僕がこれまで見聞きした範囲の目安値としてお伝えします。

ルート・経験年収レンジの目安備考(何の数字か)
未経験・第二新卒からのシステム担当350万円前後東海の求人票で確認した募集下限の体感値
生産管理・購買経験者からの転身420万〜550万円程度実務経験3〜7年程度を想定した募集の体感値
ERP導入プロジェクト主担当経験者550万円超大手・準大手クラスの中途採用で見た体感値
参考:生産管理事務(システム利用側)320万〜420万円程度同じ工場内の比較対象としての体感値

これらはいずれも厚生労働省などの公的統計そのものではなく、僕が東海の求人票や面談を通じて見てきた体感値であることを重ねてお断りしておきます。ただし厚生労働省「賃金構造基本統計調査」でも、情報処理・通信技術者の所定内給与は事務従事者の全国平均より高い水準で推移しており、システムに関わる職種が事務系の中でも高めのレンジになりやすいという方向性自体は、公的統計の傾向とも整合していると僕は考えています。同じ「システム担当」という肩書きでも、現場業務経験の有無で100万円以上の差がつくことは珍しくない、というのが正直な体感です。オファー面談で提示額を比較する際は、単純な金額差だけでなく「相手が何年分の職種経験をこの金額に織り込んでいるのか」を尋ねると、交渉の材料になりやすいと僕は考えています。

5. 求人を選ぶときに見るべきポイントと、僕が見た失敗パターン

実際に僕が相談を受けた中で印象に残っている失敗パターンをひとつお話しします。ある方が「生産管理システム担当」という求人票の文字だけを見て応募し、入社後に分かったのは、その会社では担当者が一人しかおらず、しかも既存システムがかなり古いバージョンのまま何年も改修されていなかった、というケースでした。本人いわく「一人で保守と問い合わせ対応に追われて、改善提案どころではなかった」とのことでした。

一方で、対照的な例もあります。別の方は面接の段階で「このポジションは何人体制ですか」「直近でシステムの入れ替えや大きな改修はありましたか」を確認したところ、情報システム部門と生産管理部門がすでに連携できており、担当者は3名体制で業務が分担されていることが分かりました。この方は入社後、保守業務に追われることなく、改善提案に時間を使えていると話してくれました。

この2つの事例から僕が学んだのは、求人票の職務内容だけでなく、面接で体制人数と既存システムの状態を必ず確認する重要性です。担当者が一人きりの体制は、裁量の大きさという魅力もある一方、退職や休職があった瞬間に業務が止まるリスクを併せ持ちます。逆に、情報システム部門と生産管理部門がすでに連携できている会社であれば、担当者は「橋渡し役」に専念でき、負荷は分散されやすい、というのが僕の見立てです。面接の場では「体制人数」「既存システムの稼働年数」「直近の大型改修の有無」の3点を、最初の面接から遠慮なく聞いてよいと僕は考えています。むしろこれを聞かない応募者の方が、企業側からは業務理解が浅いと見られかねません。

(結論)

生産管理システム・ERP担当という仕事は、東海の製造業の中でもまだ職種名が定まりきっていない、いわば発展途上のポジションだと僕は感じています。だからこそ、情報システム出身の方にも、生産管理・購買出身の方にも、それぞれの経験を持ち込める余地が大きい仕事だとも言えます。応募の際は、年収の数字だけでなく、体制の人数や既存システムの状態まで踏み込んで確認してみてください。皆さんいかがでしたでしょうか。では今日もがんばりましょう。

よくある質問

Q. 生産管理システム担当は未経験でも転職できますか?

僕は十分に狙えると考えています。プログラミング必須の求人は東海では少数派で、生産管理や購買などの職種経験、または情報システム部門での運用経験のどちらかがあれば評価されやすい傾向があります。東海の求人では未経験・第二新卒帯で年収350万円前後からの募集を僕は見てきました。まずは職種経験か技術スキルのどちらか一方を軸に、応募先を絞ることをおすすめします。

Q. ERPと生産管理システムはどう違うのですか?

ERPは会計・人事・生産管理などの機能を一つに統合した基幹システムのパッケージ製品を指すことが多く、生産管理システムはその中の生産計画・在庫管理などの機能、あるいは企業独自に開発された個別システムを指すことが多いと僕は理解しています。東海の求人票では両者が明確に区別されず、同じ担当業務を指して使われているケースが多いため、求人票の職務内容欄を実際の業務内容で確認することが大切です。

Q. 生産管理システム担当の年収は生産管理事務より高いのですか?

僕が見てきた東海の求人の体感値では、生産管理事務(システムを使う側)が320万〜420万円程度であるのに対し、システム担当は経験者転身で420万〜550万円程度、プロジェクト経験者は550万円を超える提示もありました。差が出る理由は、システムと業務の両方を理解できる人材の希少性にあると僕は考えています。ただし体制が一人だけの会社もあるため、年収だけで判断せず担当人数も確認してください。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

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