営業事務2026-07-21監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

営業事務・受発注事務のキャリア — 「売る側」の専門性は東海でどう評価されるか

この記事の要点

「営業事務って、結局は電話番でしょう?」と、ある転職相談の場で言われたことがあります。僕はそのとき、少し困りながらも「半分正解で、半分は誤解です」と答えました。

結論から言うと、製造業における営業事務・受発注事務は、単なる電話・メール対応の延長ではなく、生産管理や調達購買と同じように『機能の希少さ』で評価される専門事務だと僕は考えています。ただし評価のされ方は、貿易事務や調達購買とは少し違う軸で動いています。今日はこの『売る側』の事務の実態と、求人票の見分け方、年収の目安値、そして未経験から挑戦する場合の実務手順まで、順番に整理していきます。読み終えたときに、皆さんが自分の職務経歴書のどこを書き直せばいいか、具体的にイメージできる状態を目指して書いていきます。

0. 営業事務・受発注事務とは何か — 「売る側」の事務の実態

営業事務・受発注事務は、自社の顧客(得意先)から届く注文を受け、社内の生産管理・出荷・請求までをつなぐ役割です。受注データをシステムに入力し、納期を確認し、変更や追加注文があれば営業担当者や工場側と調整する。こうした一連の流れの『窓口』を担うのが基本の仕事だと僕は理解しています。

ここで大事なのは、営業事務は『顧客と工場のあいだに立つ』という立ち位置です。貿易事務が国境をまたぐ物流・通関の専門性、調達購買が仕入先との交渉という専門性を持つのに対し、営業事務・受発注事務は『社外の顧客の要望』と『社内の生産の実情』という、性質の違う二つの情報をすり合わせる力が専門性になります。僕の体感で言うと、この『すり合わせ』の巧拙が、単純な受注入力オペレーターと評価される営業事務事務員の差になっていると感じています。実際に僕が面談した方の中には、受注データの入力精度だけを評価軸にしていた企業から、生産管理側の担当者と直接調整できる方へと役割が広がったことで、担当顧客数と評価が同時に上がったという事例もありました。これは特定の個人の話として一般化はできませんが、『橋渡し』の力が評価される構造そのものは、東海の製造業に広く共通していると僕は考えています。

1. なぜ東海で「受注側の事務」需要が伸びているのか

経済産業省の工業統計調査(工業統計・経済センサス活動調査)を見ても、東海3県(愛知・岐阜・三重)は製造品出荷額等で全国トップクラスのシェアを長年占めています。これは自動車を中心とした完成品メーカーの周辺に、部品メーカー・二次サプライヤーが重層的に集積している構造の結果だと理解しています。

この構造のなかで、Tier2・Tier3と呼ばれる部品メーカーの多くは、少数精鋭の営業部門で多くの得意先を抱えています。営業担当者一人が抱える取引先が多いほど、受発注のやり取りを事務側に一部委ねる必要が出てきます。僕が求人票を見てきた印象では、この『営業担当の負荷を事務側に分散する』動きが、東海の中小・中堅製造業で目に見えて増えてきているように感じます。ここが、東海で営業事務・受発注事務の求人が一定数出続けている背景だと考えています。加えて、EDIやWeb受発注システムの導入が進んだことで、単純な電話・FAX対応の比重が減り、その代わりにシステムの例外処理や顧客ごとの特殊対応をこなす人材の価値が上がってきているというのも、僕が求人票を追いかけていて感じる最近の変化です。

2. 求人票の3パターンを見分ける

営業事務・受発注事務の求人票は、僕の観測では大きく3パターンに分かれます。同じ『営業事務』という肩書でも、実際の業務範囲がかなり違うので、応募前に見分けることが重要です。

パターン主な業務求められる強み
①受注入力オペレーター型受注データ入力、納期回答、電話・メール対応が中心正確な入力・基本的なビジネスマナー
②生産管理兼任型受注対応に加え、生産計画の進捗確認や在庫調整も担う工程・図面の基礎知識、社内調整力
③営業所コーディネーター型営業担当のサポート全般(見積、資料作成、出張手配等)を含む営業担当との連携力、幅広い事務処理力

僕の体感値では、専任で受発注だけを担う①のような求人は全体の3割程度で、残りの7割は②や③のように他業務と兼任する形になっていることが多いという印象です。この比率はあくまで独自ガイドの目安値ですが、求人票の『業務内容』欄が短ければ①、長く複数の業務が並んでいれば②か③だと見分けるのが実務的だと考えています。加えて、求人票に『生産管理部門と連携』『工程進捗の確認』といった一文が入っていれば②の要素が強く、『営業所』『営業担当のサポート』という言葉が並んでいれば③の要素が強いと読み取ってよいと思います。

3. 年収とキャリアの現実 — 比較でみる目安値

年収については、独自ガイドの目安値として、未経験・経験3年未満で300万〜420万円程度、経験5年以上で380万〜480万円程度と考えています。この目安値は、専任型よりも生産管理や品質保証事務と兼任するポジションの方が上振れしやすい傾向がある、という僕の観測に基づいています。理由は単純で、兼任型は担える業務範囲が広いほど『代替しにくい人材』として評価されやすいからです。

比較の軸として、貿易事務は輸出入という手続きの専門性、調達購買は交渉という専門性で評価される一方、営業事務・受発注事務は『社内外の橋渡し』という関係性の専門性で評価される傾向がある、と僕は捉えています。どちらが上ということではなく、評価される軸そのものが違うので、自分がどの専門性を伸ばしたいかで進む方向を選ぶのが良いと考えています。また、拠点による差も見逃せません。本社機能を持つ拠点では受発注に加えて営業企画や販促資料作成などを求められる求人が混ざりやすく、営業所単独の拠点では逆に受発注業務がそのまま専任化されやすい、というのが僕の観測です。同じ会社でも拠点によって求人の性質が変わることがあるので、応募先の拠点情報も合わせて確認しておくと良いと思います。

4. 未経験から挑戦する人が今日やるべき3つのアクション

ここからは実務的な話です。未経験・異業種から営業事務・受発注事務を目指す場合、僕がいつもお勧めしている今日からできる行動は次の3つです。所要時間の目安も合わせて書いておきます。

この3つは特別なことではありませんが、僕の体感では、この準備をしているかどうかで面接での話しやすさがかなり変わります。比喩で言えば、営業事務・受発注事務は『翻訳者』のような仕事です。顧客の言葉を工場の言葉に、工場の事情を顧客への言葉に置き換える。翻訳者が単語だけでなく文脈を理解する必要があるのと同じで、営業事務も『なぜその調整が必要なのか』という背景を理解しようとする姿勢が評価されやすいと僕は考えています。合計でおよそ1時間強の準備ですが、この1時間が面接の場での説得力を大きく変えると僕は思っています。

5. よくある失敗とケース比較

ここでは、僕がよく耳にする失敗のパターンを二つ挙げておきます。一つ目は『受注入力オペレーター型だと思って応募したら、実際は生産管理兼任型だった』というケースです。面接段階で業務範囲の確認を怠ると、入社後に『思っていた仕事と違う』という不満につながりやすい。これは求人票の情報だけで判断せず、面接で『受注以外にどこまで業務が広がりますか』と一言確認するだけで防げることが多いと感じています。

二つ目は、逆に『兼任型の求人に、受注入力だけの経験でチャレンジしてしまう』ケースです。生産管理兼任型は工程や図面の基礎知識を一定求められるため、準備なく挑むと選考で苦戦しやすい。この場合は、事前に転職エージェントや面談で『どの程度の工程知識が必要か』を確認し、必要なら書籍やeラーニングで基礎だけ先に押さえておくという手順が有効だと考えています。

ケース比較として、僕がよく挙げる架空の二人の例を紹介します。Aさんは一般事務経験3年で、電話対応とデータ入力が得意なタイプ。この場合は①の受注入力オペレーター型から始め、システムの操作に慣れたところで②への異動や転職を目指す方が無理がないと僕は考えています。一方Bさんは製造業の現場経験があり、図面や工程の基礎知識をすでに持っているタイプ。この場合は最初から②の生産管理兼任型に挑戦しても、選考で強みとして評価されやすいと感じています。同じ『未経験』という言葉でも、前職の経験内容によって狙うべきパターンが変わる、というのが僕の伝えたい要点です。

比較として、貿易事務であれば通関士資格の有無が明確な基準になりますが、営業事務・受発注事務にはそうした明確な資格基準がありません。だからこそ求人票の行間を読む力と、面接での確認力が、他の間接部門よりも重要になってくると僕は考えています。

6.(結論)

営業事務・受発注事務は、貿易事務の『通関』、調達購買の『交渉』とは違い、『社内外の橋渡し』という関係性そのものが専門性になる仕事です。東海は製造品出荷額で全国トップクラスのシェアを持つ地域だからこそ、この橋渡しの需要が構造的に生まれ続けていると僕は理解しています。求人票のパターンを見分け、自分の調整経験を具体的な言葉にしておくことが、未経験からの一歩を軽くしてくれるはずです。皆さんいかがでしたでしょうか。では今日もがんばりましょう。

よくある質問

Q. 営業事務と貿易事務・調達購買事務の違いは何ですか?

結論から言うと、向いている相手が違います。営業事務・受発注事務は自社が『売る側』として国内外の顧客からの注文を受ける仕事、貿易事務は輸出入という物流・通関の手続き、調達購買は自社が『買う側』として仕入先と交渉する仕事です。同じ『注文書を扱う』作業でも、誰の注文を、どちらの立場で処理するかが異なります。求人票では『受注』『得意先』という言葉があれば営業事務側、『発注』『仕入先』という言葉があれば調達購買側の仕事だと目安になります。

Q. 未経験でも製造業の営業事務・受発注事務に転職できますか?

僕の体感では、未経験でも挑戦しやすい間接部門のひとつだと考えています。理由は、受発注業務が生産管理や調達購買に比べて社内向けの専門用語が少なく、電話・メール・受注システム入力といった一般事務のスキルを土台に始められる求人が一定数あるためです。ただし『生産管理と兼任』の求人票では図面や工程の基礎知識を求められることもあるため、求人票の業務内容欄を必ず確認してください。

Q. 営業事務・受発注事務の年収はどのくらいが目安ですか?

独自ガイドの目安値としては、未経験・経験3年未満で300万〜420万円程度、経験5年以上で380万〜480万円程度と考えています。企業規模や拠点(本社機能か営業所か)によって差があり、専任型より生産管理や品質保証事務と兼任するポジションの方が上振れしやすい傾向があります。あくまで目安値であり、個別企業の公開求人で確認することをおすすめします。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

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